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「なぜ?」の先に、その人らしさがある

2026/09/25

ACPから考えたライフオーガナイザーの役割

「なぜ?」の先に、その人らしさがある
JALOカレッジで「ACP(人生会議)」について学びました。延命治療や尊厳、もしバナゲームを通して気づいたのは、答えよりも「なぜそう思うのか」というプロセスの大切さ。モノを通して価値観に触れるライフオーガナイザーの仕事とACPの意外な接点について考えます。

(この記事はちょっと気合が入っているので全部読むのに8分くらいかかるかも)



目次

  1. JALOカレッジでACP(人生会議)を学ぶ
  2. 「延命治療はしない」だけでは、実はよく分からない
  3. 「尊厳」という言葉も、人によって違う
  4. もしバナゲームで気づいた、自分の価値観
  5. 「好き」も「大切」も更新されていく
  6. モノの整理は、価値観の整理でもある
  7. ライフオーガナイザーは「答えを出す人」ではない
  8. 今回の学びを、これからのクライアント支援へ

 

 

1.JALOカレッジでACP(人生会議)を学ぶ

JALOカレッジで、まちのケアナース代表・薮内加奈子さんによる

 

「クライアントのその先に寄り添うために

ACP×ライフオーガナイズの実践講座

〜暮らしを整えるプロが知っておきたい『人生会議』の話〜」を受講しました。

※JALOカレッジは日本ライフオーガナイザー協会の月1回のブラッシュアップ講座です

 

ACPとは「アドバンス・ケア・プランニング」のこと。

日本では「人生会議」とも呼ばれています。


JALOカレッジで学ぶたびに感じるのですが、ここで得た知識は単なる自分の勉強で終わるものではありません。

毎回、「これはクライアントへのサービスにどう生かせるだろう?」と考えるきっかけになります。

その中でも今回は、特に充実した内容でした。

 

なぜなら、ACPの考え方と、私たちライフオーガナイザーが普段クライアントと向き合うときの姿勢に、

思っていた以上の共通点があったからです。

 

 

 

2.「延命治療はしない」だけでは、実はよく分からない

講座の中で、延命治療について考える時間がありました。

 

点滴、人工呼吸器、抗生剤、輸血、透析、食事……。

「延命治療」とひと言で言っても、その範囲はとても広い。

 

私はそこで、

「延命治療はしない」という言葉だけでは、その人の希望は実はよく分からないのでは?と思いました。

 

これは、私が葬儀に関わる仕事をしてきた中で感じていた「家族葬」という言葉にも似ています。

「家族葬にしたい」と言っても、何人くらいなのか、誰を呼ぶのか、どんな形を望んでいるのかは人それぞれ。

同じ言葉を使っていても、頭の中に描いているものは違います。

 

延命治療も、

「どんな状態になったら?」

「何は望んで、何は望まない?」

「なぜそう考えるの?」

と、その人の言葉の中身を聞いていかなければ、本当の希望は分からないのではないでしょうか。

 

講座の中で繰り返し伝えられていたのが、

「結果ではなく、思考のプロセスを共有する」ということでした。

私はこの言葉がとても印象に残りました。



 

3.「尊厳」という言葉も、人によって違う

もう一つ考えたのが、「尊厳」という言葉です。

 

「最期まで尊厳を持って生きたい」

よく聞く言葉ですが、

では、「あなたにとって、尊厳が保たれている状態とは?」

と聞かれたら、答えは人によってかなり違うのではないでしょうか。

 

寝たきりでも、身体が動かなくても、その人らしく生き、尊厳を保つことはできると思います。

一方で、同じ状態を「自分にとっては望まない状態」と考える人もいるでしょう。

 

「延命」も「尊厳」も「その人らしさ」も、分かっているようで、実はとても曖昧な言葉です。

 

だからこそ、言葉だけで分かったつもりにならず、

「それは、あなたにとってどういうことですか?」と聞くことが必要なのだと思いました。



 

4.もしバナゲームで気づいた、自分の価値観

講座では「もしバナゲーム」も体験しました。

私は「もしバナ」のカードを自分でも持っていて、これまで友人と個人的に何度かやったことがあります。

「もし今、治療が難しい病気になり、余命半年だとしたら何を大切にしたいか」

を考えながら35枚のカードのうち最初に5枚選び、

最後にその中から特に大事な3枚に絞り込んでいきます。


 

私が最後に選んだ3枚は、


  • 呼吸が苦しくない
  • 痛みがない
  • 怖いと思うことについて話せる、でした。

 

最後まで迷ったのが、


  • 誰かの役に立つ
  • ユーモアを持ち続ける、というカードです。

 

選んでみて気づいたのは、私自身が経験してきた二人の父の死と死後事務手続きサポートの経験が、

自分の死生観にかなり影響しているということでした。

これまで二人の父を見送ってきましたが、
最期のときの父の呼吸の苦しさや痛みを伴う姿をみてかなり辛かったことが思い出されました。
最後まで迷った2枚のカードはこれまで死後事務手続きサポートを経験した中で
ご遺族さまが語る故人の印象が影響しているのだと思います。
最期まで誰かの幸せを祈って亡くなられた方
最期のときまでユーモアを明るさを絶やさなかった方
家族から語られる故人の最期の生きざまは遺された人たちの心に象徴的に刻まれます。

今回はこんな風に選びましたが、
私もこれからの体験で今後選ぶカードは変わる可能性があります。

つまり、大切なのは選んだカードそのものだけではありません。

「なぜ、そのカードを選んだのか」を話して初めて、

その人がこれまで何を経験し、何を大切にしてきたのかが見えてきます。

 

これこそ「結果ではなく、思考のプロセス」なのだと思います。

 

 

ゲームの最初に、

「持ち出さない」

「パスOK」

「正解はない」というグランドルール・約束があります。

 

もしバナは、その人のとても個人的な価値観に触れるものです。

だからこそ、心理的安全性が担保された場で、他者の価値観に触れることができるのはとても貴重な時間です。

もちろん、その場で語られたことはその場限り。

内容を外に持ち出さないことも含めて、安心して話せる場が成立するのだと思います。

 

何かの機会に、自分でもまたこうした場をつくって「もしバナ」をやってみたいと思いました。



 

5.「好き」も「大切」も更新されていく

今回の講座から、もう一つ考えたことがあります。

 

それは、

人について持っている情報は、更新し続けなければならない ということです。

 

 

最近、身近な出来事がありました。

祖母が、帰省してくる孫のためにおやつを買っておいてくれます。

ただ、買ってくるのは、小学生や中学生の頃に孫が好きだったもの。

 

孫である私の息子は、「今はそんなに好きじゃないんだけどな」

と言いながら食べています。

 

祖母の中では、「この子はこれが好き」

という情報が、昔のまま残っているのでしょう。

 

これって、いろいろなところで起きているのではないでしょうか。

 

「あの人はこれが好き」

「あの人ならこう考える」

「前にこう言っていたから、今もそうだろう」

 

でも、人は変わります。

好きなものも、考え方も、大切にしたいことも変わります。

 

ACPも、一度希望を聞けば終わりではないのでしょう。

そのときの状況や経験によって気持ちは揺れ、変化していく。

 

だからこそ、対話を重ねながら「今のその人」に更新していくことが必要なのだと思います。



 

6.モノの整理は、価値観の整理でもある

そして今回、私が最も印象深かったのが、

ライフオーガナイズとACPの接点 でした。

 

ライフオーガナイザーは、モノを通して、その人の過去・現在・未来を整えていきます。



  • なぜ、そのモノがそこにあるのでしょう。
  • なぜ、それを持っているのでしょう。
  • なぜ、手放せないのでしょう。
  • これからも持っていたいのでしょうか。

そこには、その人なりの理由があります。

 

片づけというと、「必要・不要」「残す・捨てる」という結果に目が向きがちです。

でも私たちが知りたいのは、結果だけではありません。


「なぜ?」の先にあるものです。

 

「これは絶対に捨てたくない」なら、

「なぜ、これは残しておきたいのですか?」と聞いてみる。

すると、そのモノの後ろから、家族との思い出、過去の経験、

これまで頑張ってきたこと、これからやりたいことなどが見えてくることがあります。

 

モノの整理は、価値観の整理でもある。

ここに、ライフオーガナイザーという仕事の面白さと醍醐味があるのだと、改めて感じました。




 

7.ライフオーガナイザーは「答えを出す人」ではない

今回講師から講座の中でどのように考えますか?というケーススタディを提示されました。

エンディングノートを書いていて「医療」の項目で手が止まってしまった人に、

ライフオーガナイザーとしてどう関わるか?という問いです。


私自身、エンディングノートについての質問を受けることはあります。
書く内容について、特に専門家がいる分野については専門家に相談を勧め
書き方、例えば最近のエンディングノートは同じ項目のページが複数枚あるものも増えてきているので
「とりあえず、今考えていることは日付を入れて定期的に更新されては?」 などとお答えすることもあります。

 

ここでも大切なのは、こちらが答えを教えることではありません。

「なぜ、エンディングノートを書こうと思ったのですか?」

そこから、その人のストーリーを聞いていく。

 

ライフオーガナイザーができるのは、傾聴し、問いかけ、安心して話せる場をつくること。

一方、医療的な助言や診断は私たちの仕事ではありません。

必要であれば適切な専門職につなぐ。

そのためには、地域にどんな支援者がいるのかを知り、日頃からつながっておくことも必要です。

 

これは高齢者の暮らしや終活を支援していきたい私にとって、とても大切な視点でした。

 

 

8.今回の学びを、これからのクライアント支援へ

講座の最後に示された言葉の一つが、

「『なぜですか?』から始める」 でした。

 

私はこれを、ACPだけの話ではないと思っています。

 

「捨てたくない」

「実家を片づけたい」

「延命治療はしたくない」

「最期まで自宅で暮らしたい」

 

どれも、その言葉だけで分かったつもりにならない。

 

なぜ、そう思うのだろう。

 

そこに、その人のこれまでの人生と価値観があります。

そして、その答えもずっと同じとは限りません。

 

人は迷います。

気持ちは揺れます。

価値観も更新されます。

 

だから、私たちライフオーガナイザーは、一度出た「答え」を整理して終わるのではなく、

その人が迷いながら選んでいくプロセスに寄り添うことができる。

 

モノを通して過去・現在・未来を見つめることも、

人生の最終段階について考えることも、

その根底にあるのは、

「あなたは、何を大切にして生きたいですか?」 という問いなのかもしれません。

 

今回のJALOカレッジは、ACPについて学ぶと同時に、

ライフオーガナイザーという仕事が、その人の価値観に触れ、

その人自身の選択を支える仕事でもあることを改めて考える時間になりました。

 

学んだことを知識のままにせず、
これからのクライアントとの対話やサービスの中で生かしていきたいと思います。

今日の本棚
専門家なしでやってみよう! オープンダイアローグ
──安全な対話のための実践ガイド